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WEB小説:ご令嬢の結婚あるある①

昨今、流行りのジャンルとしては「愛していなかったのに愛してしまった」の流れがメインストーリーな結婚モノもあるのではないだろうか。何となくコミカライズされる作品の傾向もあるのかもしれないが、ともあれ流行りであるには間違いない。

虐げられたヒロインがその逆境に抗い、やがて愛されるようになっていく、それはまさしくシンデレラストーリーだ。時代と形は違えど、いつまでも王道は王道というわけである。

 

(全くの余談なのだが、ディズニー版のシンデレラは舞踏会の王子が『ここまで来たら異性に興味がないのでは?』くらい完全に姫君たちに無関心なのでちょっと面白かった)

 

さて、何はともあれ。今回は『不遇な令嬢のご結婚あるある』について触れていきたい。

 

 

1.普通に愛され、普通の立場で、普通に育ったご令嬢皆無説

姉、または妹の立場で親から贔屓されて育ち(主人公は辛く当たられる側)、あるいは養女のため、妾の娘であるため、貴族の身分だったが家が没落したことで、または婚約破棄の結果として、はたまた姉または妹の身代わりとして、などなど

ご令嬢の人生はとにかく波瀾万丈なのである。

変わり種で言うと、土にまみれる人生こそ至福と言わんばかりのめちゃくちゃな農業好き、本の重さで死ねるなら本望なくらい異常なほどの読書好き、漁師顔負けの釣り好きなどなど自由奔放を極めたバージョンのご令嬢もいるにはいるが、それはそれで決して普通ではないのでこういうカウントとした。

親から差別されて育てられた場合の理由自体はバリエーションが豊富だ。スキルや異能を正しく使えない・よくないものだった・強くない、など「お前それはもう親としてどうなん?」レベルの言いがかりから、美しくないというめちゃくちゃ単純かつ残酷な理由だったりする。

ただコミカライズされたとき、大抵の親は敵のような立場として描かれる上、主に序盤しか関わらないという点からかキャラデザ的に、お前の遺伝子から美人が生まれる方が稀やろのパターンもある。

 

2.結婚のお相手もノーマルではない

はてさて、理由はともかくとして、そうした事情があり、ご令嬢は結婚をする羽目になるわけだ。

あるときは恐ろしい、非情、醜い、悪逆の限りを尽くすとすこぶる評判が悪い相手。あるときは、大層な家柄と美しい容姿などを持っているが、とにかく大抵の娘は裸足で逃げ出すと評判の性格破綻野郎な相手。またあるときは、そもそも人間なのかどうかも分からないおぞましい異種族──とされている美形だったりするわけだ。

基本的に男はイケメンであればあるだけいい。ここでのイケメンとは獣顔だって参入できる。イケモノ(イケメン+ケモノ)であればいいのである。

R18モノであれば、絶倫がうんぬん朝まで寝かせてくれないうんぬんかんぬん実は性欲を我慢してくれてましたどうのこうの本当はめちゃくちゃエッチしたいけど手加減できないから隠してましたなーんてパターンもあるが、どちらにしてもノーマルとは言えないのでこういうものとした。

 

3.最初期には「愛さない」理由がある

いざ結婚となり、胸をときめかせ、あるいは怯えて、また時には期待を込めて、中には生き残るために必死になっているご令嬢に向かって相手の男はみな口を揃えてこう言うのだ。

「君を愛するつもりはない」

これで検索するだけで結構な作品がヒットしそうな気配すらある。

 

愛さない理由は何でもいい。

そもそも親同士が決めた政略結婚だった、正式の妻にはなれない身分違いの愛人がいる、嫌な側面を見すぎて今やすっかりオンナ嫌いである、過去のトラウマからオンナに失望している──などなど、枚挙にいとまがない。

ともあれ、男側には「お前を愛さないぞ(愛せない)」という理由とスタンスがあるのが王道である。

愛さないからな!?と、もはやツンデレでやっているのではないかと思うほどの王道であり、そしてこの愛せない・愛さない・愛するつもりがないの状態が物語の中盤くらいまでは続くのだが、そう長続きはしない。

 

4.しかしご令嬢には落ちる

さて、何やかんやあって、色んな日々を過ごした二人。

最初こそ、愛さないからな!?なんてわざわざ言わなくてもいいような宣言をしていた男の方も、だんだんとご令嬢に惹かれていくようになる。

時には、そのひたむきさに。その純粋さに。その心清らかさに。

時には、献身的な姿に。あまりの欲のなさに。その強い心の在り方に。

やがて心を溶かされた男は、頑なだった当初の態度を改めてこう思うのだ。

「お前を愛してしまった……」と。何なら、眠る顔に向かって心の中で言っちゃうのだ。

 

人は誰でも愛されたい生き物である。しかも、無償の愛なんて、そもそもは親からしか得られないものだ。親にも愛されなかったパターンだと尚更落ちるのは早い。引きこもりだった、恐れられていたなどのパターンだと更に落としやすい。そして、献身的な愛に弱いのだ。自分のために尽くしてくれる──それだけでツンデル装い王子さま達はグラッと来てしまう。

極端な話、熱を出した日には翌朝までベッドの傍らについて看病するだけでいい。

目が覚めたときにご令嬢がベッドに凭れかかってスヤスヤと眠っていようものなら、「ああ、なんて優しいんだ」とか「朝まで看病を……」とか、そういう流れになってくる。ちょろい。男なんて単純なものである。

(性格的に難がある場合はまだしも、立場的にそこまで入り込めない愛人の方が明らかに不利でちょっと不遇だよなと思わないでもない)

 

5.自分の気持ちに戸惑ってしまう

はてさて、とうとうご令嬢に落ちてしまったお相手の男は、どうなってしまうのか。

戸惑うのである。

「これは本当の気持ちなのか?」の戸惑い、「どうしてこんな娘を……」と迷い、「今更どうやって愛しているだなんて言えばいいんだ、こんなムシの良い話は……」と頭を抱え、「どうやって伝えようか」とそわそわする。とにかくご令嬢のことで頭がいっぱい胸いっぱいなのである。

愛人よりも妻の方がよほどいい女だと気が付いてしまった男の気持ちは、愛人からすればビックリするほど急速に冷めていく。

別パターンで、そうして優しくなってきた男の態度にビックリして戸惑うご令嬢パターンもある。無理もない。

愛されない前提で結婚生活をしてきたのだからそりゃそうだ。

むしろ契約違反ですらある。

 

6.大抵は邪魔が入る

さて、ここまで来てやっと立場的にも気持ち的にも結ばれた二人だが、当然ながらそれでは面白くない。物語には敵が必要なのである。そして、敵がいれば襲撃が発生するのである。

ここで言う敵は、おおよそ以下のパターンだ。

 贔屓されて(良い扱いをされて)いた側の姉、または妹

 さっさと心変わりして捨てられてしまった愛人

 ご令嬢が妻にふさわしくないとブチギレる誰か

 もしくは、そいつらに雇われた奴らか取り巻きとか

何となくだが、大抵姉か妹の場合は決して祝福してくれないのだ。愛されて育ったのに性根が腐ってるとか、どんな環境なんだよという気持ちになる。愛人に関しては男を恨めばいいのにご令嬢を恨むわけだが、古今東西「三角関係になった場合」はまずキャットファイトが発生するので、それはもうお約束として流そう。

しかして、そういった邪魔も妨害も、愛する二人の前ではただの盛り上がり工作に過ぎない。外野は決して二人を引き裂くことができないのである。

 

 

こうしてハッピーエンドになっていくわけだが、ハッピーエンドではない場合は胸糞扱いされてしまうのでそうならざるを得ない感じはする。確かに結婚した二人に感情移入していた読者としては、急に別れてそれぞれ別の人とくっつきました☆とか、なんか知らんけど死別しちゃった☆なんてされた日にはブチギレ炎上になってしまうわけだ。

もちろん、死ネタとして描き切るなどという手もあるだろうが、そういう場合はなんかこう、あらすじやらタグやらでネタバラシされてる印象すらある……これこそ、WEB小説あるあるだろう。

注意書きで食らうネタバレ。配慮配慮の時代であれば、やむなしなのだろう。