ここが変だよ!WEB小説~面白ポイントからツッコミまで~

なろう系を始めとしたWEB小説について書くブログ

WEB小説:ご令嬢の結婚あるある②

さて、いつぞや「WEB小説:ご令嬢の結婚あるある①」でも触れたが、ご令嬢の結婚に関するあるあるは割と多く散らばっている。前回は、主にご令嬢と結婚相手との関係性や結婚の流れから眺めてみたが、今回は「ご令嬢その人」に関するあるあるを見ていこうと思う。

yoshi-kei9090.hateblo.jp

 

 

1.「悪女」にされがち

まずまずよく見かける設定としては、主人公たるご令嬢が「悪女」とされているパターンである。それも単なる性悪女というわけではない。めっちゃ男好き、男癖が悪いというものが多い。これにより、「こんな女……」と侮蔑していたり、まともに話を聞こうとしなかったり、という結婚相手側のひどい態度の裏付けができる。大抵は噂話が発端なのに全然身辺調査しねぇのか?という気持ちは確かにある。

そこはそれ。ご令嬢モノあるあるである。婚約破棄時のイジメ行為やら浮気行為やら然り、裏付けは取らないのが貴族の嗜みなのだろう。

そんな女でも政略結婚で仕方ないんだというポーズで始まり、というお決まりのパターンであっても、ご令嬢側はレパートリーが豊富だ。「私に無関心なら趣味を楽しめるな!?」と生き生きするパターン、「ああ、どうしてこんなことに」と嘆くパターン、「いいの、私は。仕方ないもの」と諦めているパターン。いずれにしても、最終的には愛される方に回ることが多いため、テンプレ展開の場合は安心感がある。

 

2.なんやかんやで誤解は解ける

最後の最後までご令嬢が誤解されたままでバッドエンド……ということもないわけではないのだろうが、おおよそ人気が出るのは「きちんと誤解が解け、ふたりの距離が縮まる」パターンではないだろうか。結婚相手側が気付いても言わずにいるせいで、ご令嬢が誤解されたままだと誤認するというややこしい誤解のループに陥る場合もあるにはあるが、その場合はご令嬢が現在の生活を満喫していることが多い。

メンタルが強い。

誤解の解け方自体は、ざっくりまとめると以下の通りである。

①「一緒に過ごすうちに疑問を持ち、自ら調べた」

②「性行為を仕掛けたら、本当は経験がないと判明した」

③「悪い噂を流した者やらご令嬢をいじめている相手を知り、真実を知る」

 

①については、最初から身辺調査をきちんとしていればいいのでは?という気持ちもあるが、所詮は女に興味がない男だったという設定であれば意味が分からないでもない。例えば、「贅沢三昧と聞いていたが、なぜか手が荒れているな……?」など、王侯貴族かつ男性としてはなかなか珍しい着眼点を持っている場合もあって面白い部分でもある。これがバカなら、汚いな、くらいで終わりそうなものである。

②については、R18系になってしまうが大抵「男遊びが激しい女だから」という理由で手荒に扱って後悔するところまでセットだったり、実は経験がないのだと気づいて手を出せなくなったりと分岐はあるものの、割とそこで仲が深まったり距離が縮まったりする一イベントになりやすい。相手の女が男好きだからって手荒にしちゃいかんぞ。とは思うのだが、好きな相手にめちゃくちゃにされたい!という女性作家の願望であれば何も言うことはないのである。

③については、ある意味では正統派だろう。真実を知り、後悔を経て、懺悔の気持ちと共に悪役を断罪してハッピーエンド。シンプルに正攻法である。分かりやすいからこそ、そこに至るまでのステップでどう魅せるのかが作家の腕の見せどころになりそうだ。

 

3.実は実家でひどい目に遭っていた

これは妾腹であったり、異母姉妹であったり、目や髪の色・スキルなどで差別されていたり、理由はさまざまだが「ご令嬢の実家こそが敵」というパターンである。

姉妹で扱いに格差がある程度ならまだしも、使用人として扱われていましたという展開もよく見るものである。その点はもう古典的であり、いっそシンデレラだと思えば分かりやすい。

それでもご令嬢は真っ直ぐに育っている。あるいは、そのためにひどく卑屈になってしまっている。もしくは、そのせいで心を深く痛めている──ということだが、それは結婚相手によって癒される、または結婚相手を癒すための特性になるため、いずれにしても必要な悪役であるといえる。

ざまぁ展開とも呼ばれる「スカッとモノ」でも、姉妹のいずれかに仕返しをする類の話はちらほら見られるため、需要はあるのだろう。読み手は主に主役であるご令嬢に感情移入するのだから、当然といえば当然である。

 

4.本当は大層美しい

とにかく主役である以上は美しいのである。

と、一言で終わらせるのもあれだが、そうとしか言いようがない。

地味な見た目であっても少し手を入れてやれば、もう絶世の美女!

ひどい格好をしているが美しく着飾れば誰もが振り返る魔性の女!

素顔を隠し続けていたが、その下には目を瞠るほど美しい顔が……!

──と、どのパターンでもそれほど大差ない。主役は常に美しくなければならない。その美しさの基準をどこに置くか、というだけの話である。中にはご令嬢の心の清らかさや優しさを描写しているものもあるが、例えばチビでブサイクで貧乳で……なんてパターンはない。チビや貧乳くらいはあるだろうが、ブサイクはないと断言してもいいくらいにないのではないだろうか。作中でブサイク扱いされている場合、例えば髪を染めればいいだけ(例:赤毛は可愛くないという価値観)など、お手軽変身マジックが発生する。

どう取り繕ってもドレスが似合わず、誰が見てもブサイクだが、それでも結婚相手に愛されるパターンはあまり見られない。

なお、ここでは世間的に恐れられている種族のご令嬢について、その容姿ごと受け入れるという場合は含まない。だってそれはもう性癖だもん。白雪姫の王子が、遺体であるからこそ彼女を引き取ろうとしたようなものである。

 

5.恋愛についてはド素人である

恋愛初心者どころか、そもそも入門編にすら触れたことがないパターンも多い。初恋くらいはしたことがあるものの、告白した・されたことはないという段階だ。

これはご令嬢の性格パターンは問わず、基本的に「恋愛? 死ぬほど経験してますわ。何でもお聞きになってくださいませ」ということはない。手が触れた程度でもドキドキするような甘酸っぱい思春期真っ盛り少女か、他の男とは違う……心がときめくのはあなただけ!な大人の女に分かれる気がする。

何なら「男の人を異性として意識したことないですね!!」くらい、もう清廉潔白というよりはまだ幼児だろくらいまっさらなパターンもある。

 

 

さて、今まで触れてきた内容は個人の全く適当な感想でしかない。ここに当てはまったからといって良いだとか悪いだとかいうものではない。肝心なのは、どういう経緯を経てどうなっていくのかという物語の流れと、それを描き切ること、そしてそのための描写である。

「あるあるw」「それわかるw」くらいのテンションでお楽しみいただきたい。