『カクヨム』といえば、2023年3月期通期連結業績で過去最高の売上高・営業利益を記録したと発表していた泣く子も黙るKADOKAWAと株式会社はてなが共同で開発した小説投稿サイトである。ちなみに余談だが、ゲーム事業は特にとんでもないことになっていた。ELDEN RINGの力は偉大である。
さて、話を戻そう。
カクヨムのコンテストといえば、恒例の高校生をターゲットにした「カクヨム甲子園」が今年も開催される。しかし、今回筆者が注目したのは少し前にさかのぼる。
そう、3月に開催されたカクヨム誕生祭について、だ。
(このブログを書いているのが5月のため、話題性としては遅刻も遅刻である)
今回はこちらの情報から読み解いていこうと思う。
1.企画ターゲットの違い
まず、今年と去年のカクヨム誕生祭を比較するだけで、既に違いがわかる。
引用元:https://kakuyomu.jp/special/entry/6th_anniversary
引用元:https://kakuyomu.jp/special/entry/7th_anniversary
去年はコラボ企画たっぷりの「カク側」向けのイベントだったことがわかるだろう。その一方、今年は「ヨム側」にも重きを置きに来ている。
今回から、読者についてもイベントに参加できるように仕込んできたといえる。
去年に引き続き開催されたKACこと「カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ」についても同様だ。2022年は6名にAmazonギフト券5000円分をプレゼントするとしていた「カクヨムレビュー賞」があったが、2023年は「goodレビュワー賞」と「KACレビュワー賞」に分かれ、前者は4名に5000円分、後者は20名に1000円分の図書カードがプレゼントされた。
めちゃくちゃシンプルに言えば、去年は3万円だったレビューへの報酬予算が今年は4万円に増額されているのだ。
その分だけお題採用賞が5名から4名になるなど、ちょっと一部ショボくなった気も。……気のせいである。
更には今年は『ヨムマラソン』と題して、
読むだけでアマギフ当たりますよという太っ腹企画があった。
普段から読んでいる人からすれば、「読める上にギフトチャンスまで!?」という、なかなか驚きの企画のプレゼントは総額70万円。
しかし、これだけではない。今年は読むだけで、最大7万円分が当たるチャンス!と称して『読書量くじ』が導入されている。読んだ文字数が抽選番号になるというものだ。詳細は以下のとおり。
総額9万1000円。金の話ばかりとなって大変申し訳ないが、総額約80万円を注ぎ込んでいるのである。読むだけで。読むだけで、だ。
アマギフの大盤振る舞いすぎて、
そんなにAmazonで買い物させたいんか??
と、思わずにはいられない。
読者がいなければ作者もいなくなる。作者が少なくなれば読者がいなくなる……それは分かる。当然の循環である。もちろん、カクヨム側にもメリットはある。だが、それにしてもハッキリと読者をターゲットにしてきたな、という印象だ。
しかし、何も急に誕生祭で読者に媚びを売ったわけではない。
今までにも読書キャンペーン、読者応援キャンペーンといった読書を後押しするキャンペーンのほか、「カクヨムサポーターズパスポート」によるギフト送信を体験させるキャンペーンも打ち出していた。ついでに直近ではGWヨムキャンペーンも出していた。
前々から読者取り込みのために施策を講じてきたのだ、ともいえるだろう。
2.機能の改修
ついでに、ここ一年程度の機能情報でも確認してみよう。
2022/4/26 | 【ギフト】読了後、贈れるように変更 |
2022/7/5 | 【注目の作品】興味のある作品に出会いやすくなるように変更 |
2022/9/13 | 【小説を探す】リニューアル |
2022/10/25 | 【スマホ版「小説を探す」】情報追加、新着/完結作品からも探せるように変更 |
2022/11/22 | 【スマホ版「小説を探す」】最近読んだ小説の関連作品をレコメンドするように変更 |
2023/1/18 | 【検索機能】リニューアル |
2023/2/16 | 【検索機能】おすすめキーワードの並び順をランダムに変更 |
2023/3/8 | 【検索機能】書籍化作品を抽出・除外できるように変更 |
2023/3/10 | 【検索機能】小説の長さの指定に「大長編」(50万字以上)を追加 |
2023/4/14 | 注目の小説をメールで届ける機能を追加 |
2023/5/1 | 【検索機能】フォロー中の小説を抽出・除外できるように変更 |
めっちゃ検索機能を弄っとる
めちゃくちゃ読者に誘い込みをかけ寄り添おうとしている気がしてきた。
これだけで結論付けるのは考察として雑ではあるものの、カクヨムが読者にも自分のサイトで読むメリットを与えようとしていることは確かだ。作者への還元として作品の収益化や投げ銭自体は既にあちらこちらで採用されている上、読者がいなければ成り立たない。そして、読まれなければ作品投稿の意欲が低下するため、読者側を向く施策は確かに必要だろう。
そもそもカクヨムの運営元KADOKAWAは出版事業も抱えているため、単純に読書を行うユーザーはお得意様なのである。潜在顧客ともいえる。
3.読者の重要性
カクヨムが4月に発表した以下のデータも、読者の重要性を裏付けているといえるだろう。発表内容によると「カクヨムの会員登録ユーザーのうち、なんと94%が読者!」とのことだ。
そして、「作者の1人当たりの1ヶ月の平均読書量が約56万文字なのに対し、読者は約153万文字と、実に約2.7倍もの差がありました。」とのことである。(作者は作品を投稿したことのあるユーザーだろうが、この場合の読者は読み専でいいのだろうか……)
こちらについては、そりゃ書く時間が必要な作者と比べたら違うだろうなとは思うものの、とにかくこれで読者がいかにカクヨムにとって重要なのかは明らかだ。ユーザーを逃すわけにはいかない。本を買ってもらわないといけないわけだし。
ここまで眺めてきて分かることは、読まれたいのならカクヨムに行くべし、ということだろう。サイト規模が大きくなればなるほどライバルも増えるといえるわけだが、圧倒的に読者が多いのであれば狙い目でもある。そして、読むことで得したい読者もカクヨムに行くべき、ということだ。たくさんの作品が読める上にアマギフまでもらえちゃう!!というわけである。
ともあれ、今後もカクヨムでは読者向けの戦略が展開されると思われるため、読む場所を特に定めていない、あるいはサイト登録していないヘビー読者にはカクヨムがおすすめだといえる。